メインヒロインは最胸であってくれ!

『巨乳フェチ男子×作中で一番大きなモノをお持ちの女子』のラブコメを軸に紹介

「推しが隣で授業に集中できない!」レビュー:推しへのガチ恋を叶わぬ夢と生きる女の子と、推しとの自己実現を叶えた同級生の環境格差がじわーっと来るドルオタ百合コメディ - 『まーや推し』視点で見る友情とエモ、結末の解釈を本作の魅力と共に解説

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※番外編8,9,10は単行本未収録なので未読の方は読みましょう!

※最終回のネタバレが多く含まれるので注意

読後の感想

「推しとな」は"まーやの物語"

「推しとな」はやっぱまーやの物語なんだよな、咲子は夢叶えたけどまーやの着地点が無くて可愛そうなんですよ。自分の読解力が正しければまーやの夢は千尋との同性婚なので叶わぬ夢だと自覚してる。同じ悩みを抱えてた本山は結婚して、だからやっぱ幸せになって欲しいんだよな…。まーや自身の幸せを。

千尋が結婚したら…彼女(ガチ恋)の幸せは?

千尋が結婚したらバリキャリになるのかな。心にぽっかり穴が開くのは確か。その穴を埋める為にホス狂とか宗教とかにハマらないか心配だよ…。正直、あの千尋ファンの同級生の眼鏡くんと良い関係になって欲しかったなぁと。卒業時に(田中の方から)ちゃっかり連絡先交換してるとか、匂わせて欲しかった。

まーやはすっごい嫌な顔すんだけど、利用価値あるかもみたいな持ちつ持たれつな関係性で卒業後も関係続いてるとちょっと嬉しい。最終回の女子会シーンでまーやのスマホの着信履歴に田中から掛かってきてるのが一瞬映るとかね。

親友が"向こう側へ"行ってしまう

仲良し3人組の結末を語る上で重要なカタルシスです。咲子は"向こう側"に行こうとしてる。

咲子は千尋との約束を果たし、夢を叶えた。

まーやにとって一番つらい"結末"は、悲恋によって"親友まで失う"ことなんです。

環境格差にめげず這い上がろうとする強い女性

結局、まーやの人生の基礎になってるものが千尋だけなのに対して、咲子は千尋と写真家の夢があるのが強くて、まーやの足場が弱いのよね。自己実現千尋という偶像に縋ったまま終わってしまった。咲子とは文化資本や環境格差が露骨に出てて、でもまーや自身で頑張ろうとしてる姿は凄く良いんだけどね。

税理士の試験に向けて夜遅くまで勉強するまーや。

子供の進路に悩んでくれる親が居るって子供は気づかないけど幸せなんだと。

咲子や千尋の家に泊まったまーやはどんな気持ちだったのかな。

仲良し3人組の楽しい時間はずっとは続かない

少なくとも、まーやはソロで生きて行けるタイプの強い女性なので、千尋という偶像が無くなった時に気持ちが崩れなければ、たぶん大丈夫だと思います。本山の結婚式のシーンで千尋と咲子の結婚について言及してるし、やっぱ最後は1人になるの分かってるから頭の良い子なのよ…。幸せにしてぇ…。

「あってもちひろちゃんと咲子の2回だろうし、だとしたらもっと先だろうし。油断してた…」

涙腺崩壊カット。時間は止まってくれない…。

最終回から読み取れる、3人組の将来…

余談ですが、最終回で同級生たちの近況を咲子が千尋に語る場面で、まーやは"眠ってる"んですよね。これは夜遅くまで勉強を頑張っている、という描写の印象付けだと思いますが、仕事で繋がっている咲子と千尋に対して、既に壁ができているまーやの立場があり、まーやが自分の意思で眠っている、という一種の回避行動とも見れます。

他にも、まーやだけ専門学校を出て今何の仕事をしてるのか語られてないんです。高校の普通科が赤点ギリの彼女がすぐ取れる資格は、おそらく簿記(専門学校)→経理(現職)→税理士(勉強中)の流れと予想していますが、学費は実家の経済状況からして自腹(奨学金)でしょう。推し活と両立する為に夜職などしている可能性も十分考えられます。

"アイドルの千尋"はいつか終わる

まーやの大好きな千尋ですが、アイドル(春シャン)を"ずっと"続けるのは年齢的にいつか終わりが来るので、どこかのタイミングで女優またはソプラノ歌手、後進を育てる為の職業などに転向するのではないかと思っています。

まーやの愛の向き方は"春シャンの"吉田千尋ではなく、"吉田千尋その人"である為、春シャンを卒業してもガチ恋(同性愛)は続くと思います。ここまで"近く"なってしまった以上、失恋(千尋の結婚)以外でまーやの"向き"を変えるのはおそらく無理です。あらゆる"可能性"を考えて時間だけ過ぎて行くことは想像に難くありません。

「でも私が一番望む関係は無理だってことも、本当の気持ち伝えてもちひろちゃんは困るってことも、一緒にいるうちに分かっちゃった」

「だから今まで築いた関係が私の一番の大切なもので、それを大事にしたい」

この気持ちを持ったまま"良き友"として千尋の子供の顔を真っ直ぐ見られるか、その覚悟はあるか。

メインキャラクターの所感

キービジュアルの"見えない部分"がエモい!

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  • 咲子

見た目地味で性格常識人枠という主人公属性としては弱いが、女性読者が感情移入しやすい"これ私"枠の条件を満たす、地味子好きの男性読者に刺さる。

咲子が一番可愛いのはここです。好きなものを貶されて、でも相手の価値観も尊重するべきで、「見ればわかる!」をした自分が相手に押し付けと言われて空回り、気持ちがぐちゃぐちゃになって楽しみにしてたライブをポジティブに見れなくなってしまい、全部ひっくるめて悔しくなってしまって泣いちゃうのが可愛い。

  • まーや

女性向け作品によく投入される自己中キャラ、ギスりの起点なので読者受けは悪い配役だがこのポジションが一番人間味溢れている。本編では咲子、最終回はまーやの方に感情移入する女性が多いと思う。

この辺はもう男には分かりやすく刺さる百合デレ演出。ちひろちゃんが言うからだもんね、咲子だけ仲間外れにするのは違うもんね(ちひろちゃんも見てるし)っていう体裁で、しっかり"お揃いの"キーホルダー渡してるのいいよね。

八方美人でヨゴレを見せない為つかみにくい。天然な性格は男性受けは良いが女性にはぶりっこに見えるため賛否両論、前者2人比べてキャラが薄い。千尋タイプ(お姫さまみたいな無垢な女の子)に萌えるのは女児…。

千尋が一番可愛いのは咲子からの"お手紙"をくしゃくしゃにして投げ返して泣くところです(6巻)。これもきららではやらない演出なんですけど素晴らしいので是非6巻まで読んでください。手紙の折り方にも注意して見てください。

  • 外山

6巻から登場するテコ入れキャラ、続いてたら外山からまーやに矢印(ラブ)が向く展開を考えていたような気がします。外山がまーやを押し倒して同性に好意を向けられることの怖さを自覚させるきっかけみたいな展開ができそうです。

まーやから友チョコ貰って嬉しそうに猫みたいにくっついてデレてたのに、次のシーンでピシャリと冷や水浴びせること言うギャップが可愛いですね。百合視点で見るなら千尋に嫉妬してる?と思われがちですが、最終回で男性と結婚しているのでノンケです。(なんでだよ!)

アニメ映えするシーンがめちゃくちゃ多い

京アニと親和性が高そうな演出が多い、溜め込んだ気持ちを解放する時の心理描写を顔面にブワー出す感じの顔しまくる。2巻で千尋が「悔しいよ!」って叫ぶシーンとかアニメ映えぱねぇいと思う。何でこの作品見つかって無いの?ほんっと勿体ない。

今からでも良いのでアニメ化待ってます!!!!!!!!!!!

ここもっとこうした方がよかった点

基本的に少女漫画なので00年代だったらアニメ化されてたと思います。今は女性も令嬢モノが強くて女子学生モノは"きらら"にしないと厳しいのと、コミックDaysが本来の読者層にリーチしてない。出版社アプリ独占作品って良い作品が埋もれてしまうデメリットがあるよね。百合目当ての男性向けならニコニコ漫画にも出して、女性含めた全世代も取るならピッコマかLINE漫画で"待てば無料"形式で公開した方が良いと思う。

「クラスに推しのアイドルが転校してきてリア友になっちゃった!」という、小学生くらいの女の子が憧れそうな設定の"なかよし"系少女漫画を男性読者にも売れるように広く取って現代風にアップデートしたらこんな風になるんだろうな、というテストケースとしては凄く良くできていました。「子供だけでライブ行っちゃダメ!我慢しなさい!」みたいな親目線の教育的描写が入ったりするのもそう。"推し武道"はもう少し上の年代を対象としてるんで、本作の絵柄はデフォルメの使い方といい耽美に寄せない素の可愛さを推したいのはよく分かる。

女子の濡れスケ…えっ…ちじゃない。

また1~3巻で写真部の先輩や田中といった百合の間に挟まる男を出し過ぎて脱落者が続出した為か4巻以降は男は全く出さなくなりました。おそらくアンケや1,2巻の読者層のデータから購入者の多くが男性だったので配慮したものと思われます。少女漫画なら咲子は先輩、まーやは田中とくっつく(匂わせながら終わる)と思います。男性向けなら脇役でも女の子にするのが定石で、男女比にリアリティはいらないのと、その脇役の子にファンが付いたりするので女子の頭数は多いに越したことはないです。

珍獣枠:次の動きを予測できない謎キャラだけど可愛いからヨシ!される子

あと単行本表紙や特典イラストの傾向からして作り手側が千尋推しまくってるのに違和感があって千尋はそこまで萌えないです(珍獣枠的な感じ)。男性向けなら春シャンメンバーのグラビアも混ぜた方が絶対良い!

店舗特典付きの新刊が減っていき、おそらく売上低迷のため作中歌プロモが始まり新規読者獲得を目指した形跡が見えます。やるにしても遅い! もったいない!!

www.youtube.com

"大人のステージ"の物語も見たかった!

もしこの路線(きらら系にはしない)で男性読者に刺さる内容にするなら「まーやを救いたい(父性感情)」路線にするのが良い。上記の"このままだとまーやが1人になるけど"感を匂わせて読者に「助けなきゃ…」感が出せると先が読みたくなる。

高校編はさらっと片付けて芸能活動編に移って大人のステージの物語にする必要があります。その上で"どうやったらまーやの恋心を諦めさせるか"をメインに変えるんです。ここまで紡いできた3人の友情がまーやの悲恋によってぶち壊れるのを阻止しないといけない。これが物語のカタルシスになります。結末を描くならば、まーやは"救えない"方が悲哀感あっていいです。大人向けビターエンド。

春シャンメンの持ち番組、AD田中、カメラマン咲子、事務所スタッフ兼、千尋のマネージャーまーやetc…路線はとても楽しそうです、まーやも向こう側に行くべきなんです。高校生ドルオタ百合モノとしては変わり映えがしなく飽きていってしまいます。名作になりうる可能性はあるが、日常モノとして読んでいた読者を切る事になるので賭けです。

"きらら"にする場合の男性視点の改善点

作中で一番きらら感を感じたのはここ、顔の良い女子がイチャついてるのが大事。

  • ドラマ10より、ドラマ5・サービス5の割合で構成する
  • キャラデザに華が無い(全体的にモブっぽい)
  • 薄めのキャラで行くなら体型の描き分けくらいは欲しい
  • 咲子・まーやのどちらかは巨乳にするべき、外山は絶対巨乳にするべき
  • 1~2巻でギスギス展開は避ける
  • 男は単純なのでキャラで「こいつ好き!」ってのが居ないと弱い
  • 関係性に萌えるのはおそらく女性
  • 大学編、芸能活動編を想定すると、まーやも向こう側に行くべき
  • まーやに千尋を押し倒させちゃうとかガチ目なのをもっと押す

春シャンメンバーについて

みさっきー、元々はショートだったが春シャンが成り上がる為にロングに。

さなちん、みさっきーと同期の初期メンで絆が強い。

にしさん、ザ・きららって感じ。

男性読者人気は、みさっきー、にしさんが2トップ争いして後はその他って感じです。咲子とまーやが平民ルックスのためキャラ人気はこの5人の方に集中しそうです。きららとは配置が"逆"なんですよね。キャラじゃなくドラマベースなので仕方ないのですが。テコ入れキャラ(外山)出すより、4巻辺りから春シャンメインに切り替える方が良さそうでした。

ちろちゃん(千尋)&ことちゃん、メンバー間での百合も推したい感。

全体的にコメディタッチで"耽美を切ってる"ので体がくっついたりする時の生々しさは描かないんです。あと間の取り方が特殊、そこが良かったりもするのだが。

なんだこれは…

!? !?!?

「外澤磨彩(まーや)」を中心に本作の魅力を語る

女子高生中心の百合・日常コメディ

本作は女子高生中心の百合・日常コメディ。体裁上は男性向けだけど主人公にいじわるをしてくる同級生女子居たり、内容は少女漫画を意識していて、女の子同士の友情や"エモさ"を大事にしてる作品。

そのため絵柄に釣られて来た男性読者がギスギスした空気やキャラ描写の色気の無さに2巻辺りで脱落しそうな印象を受けました。きららやCUNE系などのいわゆる"売れ線としての百合"はキャラも肉感的に描くし、サービスシーンも押してきますが、本作は巨乳は一切出ません!温泉シーンは肩から上まで!

"咲子×まーや"の関係性がエモい!

ただそれを補って余りあるストーリーや描写の深みが刺さります。特に私の推しである「まーや」がもう可愛くて可愛くてたまりません。一言で属性を説明するならば、ヤンデレ×百合ガチ恋女子で、主人公の咲子にいじわるをしまくるんだけど、どこか認め合ってる関係性がエモいです。本作は荒んだまーやの心が開いていく過程が裏テーマです。

16話は初めて咲子にデレるまーやが見れて最高です…いじわるされ続けてたのに(チケットを失くしたまーやに)ここまでやってくれる友達思いの咲子もベタだけどすごくエモい…。

ガチ恋のまーやに救いがない

で、やっぱり本作は主人公の咲子が自己実現を果たすのが主軸であり、エンディングの一枚絵なので、まーやには救いが無いのが読後感を揺さぶられる要素で、ガチ恋(同性愛者)の行末を考えると彼女は一人ぼっちになるのが確定してるんです。

「あってもちひろちゃんと咲子の2回だろうし、だとしたらもっと先だろうし。油断してた…」

※百合作品として売りたかったら、最終回の結婚式でのまーやの台詞は出てこないんです。百合の女の子が男性と結婚する将来像を匂わせる台詞は、百合として読んでいた読者の感情が台無しになってしまう。

本作は百合ではなく、ガチ恋の悲恋の物語

最初は対立してた咲子との確執が徐々に解れて行く様子、仲良し3人組を"これでもか"と描いてきて、最後に”その時間は永遠には続かない。みんな其々の人生の駒を進めて行くよ。”と提示して、残される子が1人居るよね。と想像させる余地がニクい。つらい。ざまぁ系じゃないでしょ、この作品、友情モノなんです。

シングルとしての生き方を肯定しない私の価値観が古いのかもしれませんが、千尋はおそらくいつか男性と結婚するんです、まーやもその日が来ることをもう覚悟している。だから、どうにかして彼女を幸せにしてあげたい父性感情がぐっさぐさ刺さるという。千尋の存在や彼女との関係性がまーやの人生の全てなので、そこが無くなったら壊れてしまうのではないかという怖さがあり、明るく終わっていますが、じわーっと死にたくなる感じがつよい。

まーやは千尋のメンターになれるのか

まーやは複雑な家庭環境に悩み、その時に引き上げてくれたのが千尋(春シャン)で、千尋が居なくなってもし、また"病んで"しまった時に、引き上げてくれる人が絶対必要なんです。その時にはもう咲子は傍にいないかもしれない。"八つ当たり"したくても彼女の人生も刻一刻進んでいるのです。だから上記の「涙腺崩壊カット」がぐっさーとクるんです。

"ファンからメンターへ"が公式解釈、まーやの将来像という見方もできますが、まーやの"気持ち"を尊重するならば、千尋"生涯の"メンターになれるのは咲子だけなんです。おそらく千尋結婚後の"3人の関係性"は解釈が何通りかあり、私の解釈は下記のSSで書き切りました。

何でこんなん創った…ってくらい原作の筒井テツ先生が天才すぎる。

つよつよの女の子が弱くなるの可愛い過ぎ

主人公の「咲子(右)」に敵対意識を持っている「まーや(左)」が盛りメイクキャラで、咲子にすっぴんを見せるのは抵抗ないけど、「千尋(中央)」(←まーやの推しアイドル)に見られるのは絶対に無理。という、感情と顔(化粧)の変化をリンクさせた"女の子にしかできない描写"が素晴らしいです。"きらら"だったら絶対にすっぴんヒロインなんて出しませんから。描写の細かいなと思ったのはまーやが咲子を見る時は常に黒目なのに、千尋を見る時は光が灯る事。

普段つよつよの女の子が"好きな子"にすっぴん見られるってだけでこんなに弱くなっちゃうのやばい…女の子ってめっちゃ可愛いな…ってのが出過ぎてます。

無駄にリアルな環境格差

まーやは片親家庭でネグレクト母親が彼氏とのノロケを娘に話したり、家にまで連れてくるため娘は外泊を余儀なくされたり、無駄にリアルな環境格差を見せつけてくる闇を抱えているキャラでもあります。母親の特性をしっかり受け継いでいて欲しい物は奪い取るというスタンス。自由奔放で他者から見たら自分勝手な性格が学校でも浮いた存在でした。

性格が災いして推しと純粋な関係を築けなかった

本当はガチ恋なのに初めて知ったかのような対応をとるまーや

咲子は偶然クラスで隣の席になった子が推しで自分がファンであることを告げてリア友になったのに対して、まーやは千尋とファンとアイドルという関係性を超えた一番目の友人になりたくて春シャンファンであることを隠し"打算的に近づいた"ことで、2人の気持ちが屈折しており、そのことでまーやが病んでいくのがドラマの書き方として秀逸です。

千尋はまーやを高校入学時の自分を起点として新規ファンになってくれた子だと思っている為、まーやの"想いの強さ"に対して、千尋からの返信が冷たく見えてしまう。

つまり自分のエゴのせいで透き通った関係づくりに失敗(自爆)し千尋を傷つけている状態なんです(咲子も巻き込んでいる)。後で"騙していたこと"を千尋に告白し和解しますが、これは母親譲りのまーやの自分勝手な性格設定を汲んでおり上手いです。

千尋からの"お手紙"を読むシーン、隠し事の無い友情を育んでいた咲子のそれと比べて病んでしまう。千尋との楽しい旅行だったはずなのに…後半はギスギスしてしまいます。

千尋との和解のシーンの演出も素晴らしいので是非7巻まで読んでください。

痛みを知っている子は良いお母さんになる

水着回(スク水)でスタイルが良いと描写されているのもポイントが高い。旅行回でまーや単独のお風呂シーンもカットせず見せて欲しかった…。この作品はメイン3人以外にも準レギュラー女性キャラが出ますが、私は結婚するならまーや一択です。すっぴん顔も含めて可愛いんですよねえ。このタイプ(痛みを知っている子)は絶対良いお母さんになるので闇を照らしてくれる男性が必ず見つかるはずです私の様に。最終回で努力家な所を描写されているのもポイントが高い。千尋より私はまーやをずっと推していましたよこの作品。

まーやスターターセット作りましたけどすっぴん回の方が良いシーン多いんですよね。左の3枚以外は全部すっぴん顔です。ほんっと可愛いなあこの子。ふわっふわの髪の毛が凄いいい匂いしそう…。私はおっぱいフェチですがおっぱいが無理ならまーやみたいな方と結婚したいです。(2回目)

田中ルートを考えてみる

千尋をめぐってまーやと対立するサブ男子

2巻で登場するサブキャラ男子。千尋をめぐってまーやと対立するのですが、4巻以降はフェードアウト。この男子、元々まーやとくっつける予定だったのかもしれないと邪推していますが、百合作品であるため商業的理由で切られてしまった可能性があります。

まーやは千尋ガチ恋する、「千尋限定のレズ」なので、咲子や他の女子に対してはその気は起こしません。むしろ千尋との関係を予感させる人間は男女問わず敵とみなし、咲子や田中もその内の人間なので対立しています。

千尋に告白するが、玉砕

まーやの誤解を解く為に千尋に告白をする田中。玉砕したが、少し期待していた。

3巻で春シャン(千尋の所属するユニット)ファンの女子グループ会が行われた際に唯一男子として参加を許されたのがこの田中であり、まーやと対立しながらも同好の士として良い関係を築けそうな、といってもまーやからしたら敵なので、まーやみたいなタイプの同性愛キャラを異性と絡ませる場合、敵だけど春シャン関係の時は持ちつ持たれつな関係になる、みたいなライバルだけどある一場面では協力する関係がエモいなと思っています。

まーやに敷かれて欲しい

なので、高校卒業後もイベントで度々顔を合わせていたり、観客席や待機列でバッタリ会ってまーやからギロっと睨まれつつも関係が続いていると良いなと思います。ランダム封入のダブリグッズ交換したり、"あくまで"利用価値のある身内としてまーやに敷かれて欲しかった。

3巻・番外編「頑張れ!田中くん」では、あの一件以来、まーやを"色んな意味で"意識している描写が。また"田中の夢の中"でまーやが魔王(ラスボス)として登場します。ここまで匂わせるならちょくちょくフラグ立てて欲しかったな。

ラジオ番組ADのT君(後日談)

最終7巻の巻末オマケページに、千尋のソロアルバム発売記念ロングインタビューが載っており、その中でT君(文脈から田中)の近況が語られています。"千尋と番組をやるのが目標"と語っているのを別の春シャンメンバー(明日香)の又聞きで千尋が知って、「こんなところで繋がるんだ!」という旨が書かれています。

これの意味するところは田中も咲子と同じく、向こう側へ行ったということです。まーやだけこっち側なのは"悲恋ルートの救済役"が居なくなるので個人的には残念だったのですが、あえて曲解してネガティブな落としどころにしている部分もあるので、作者の提示する解釈は皆さんが想定するような明るい未来で、大人になっても3人共ずっと一緒でよいのだと思います。

推しが隣で授業に集中できない!「まーやエンド」

作中最後のシーンで描かれている、千尋を応援するまーやの姿を見て、彼女の"シングル"としての生き様を自分は全肯定したくなかったので、まーやが主役として輝ける結末を用意してあげたいと思いました。

※まーや主観/ノマカプ化有注意

時は過ぎ、3人共アラサーに。咲子は結婚し出て行ったので、2人の共同生活は終わり、私1人で暮らしている。咲子の結婚式は高校の友達みんな集まってあの頃に戻った気分だった。もちろん、友人代表のスピーチは私、まあ、腐れ縁だしね。女1人暮らしにはややスペースの余る2LDKだったが、仲良し3人組の集合場所を失くしてしまうのは何となく嫌だった。家賃なら別に。外澤磨彩の今の職は税理士だ。

「まーやちゃん、すごい! やったね、努力してたもんね」

「いや、ちひろちゃんに比べたら全然、凡人ですよ私なんて」

「ほんと、外澤さん遅くまでずっと勉強してるから」

「咲子に負けたくなかったからね」

「えー、そんなこと思ってたんだ。でも、お疲れ様」

その折、アイドルから女優に転身し、大活躍中の千尋。あの3人での女子会の後も年に何回か集まる機会はあったが、みんな仕事や家庭で忙しく昔のように中々3人で集まる機会も減ってしまい、近況報告も少なくなっていた。その彼女の結婚発表のニュースを見て、食事中だった私は箸を落とす。ついに"この時"が来てしまったか、と。この日が来ることは分かっていたけれど、いざ実感として見ると意外と"持つ"ものだ。相手はドラマで共演した同い年の俳優。まあ、よくある馴れ初めか。最近はドラマばっかりでテレビで見る姿しか見てないし、生のちろちゃんと会ってないからかな、他人行儀みたいで自己嫌悪してしまう。

―――恋愛とか分かんないの。でも…だから、もしほんとに好きな人できたら、2人にはこっそり伝えるね…!

スマホの着信音が鳴った。咲子だった。同じニュースを見ていたのだろう、取る前から彼女の第一声が手に取るように分かってしまう。そりゃあ、つらいけど。慰めはいらない、あの頃から現実的に生きてきたのは私の方だよ。私にはちろちゃんしか無かったから。あいつにはちょっと嫉妬してる、失敗すればいいのになんて思った事もある。仕事でちひろちゃんと会うこともあるし"知ってた"かもしれない。

私も咲子もこの日は仕事だったので、形式的な会話を済ませ、スマホの"電源を切った"。

「一番自信があるのは?」 「…これです。」

「そう。理論は教えるけど、最後は貴方のセンス。この世界で食べてる人はみんなそう。貴方はまだ視野が狭いから、色んなものを見て、吸収して勉強。それに、人物写真に偏っているわよね。何故? 見た人にどう感じて欲しいか、よく考えて」

「は…はい。(見透かされてる…)」 「それで…課題の方は」

「ダメね。やりなおしてきて」

厳しいなあ…。プロの世界では全然通用しないってことだよね。

やっぱり、浮かれてたのかな。

―――――――――――。

『それ、めちゃくちゃ羨ましい』

ちひろちゃんと約束してる夢って、それだけで最強なのに…?』

修学旅行のバス、あの時の外澤さんの言葉がこんな時いつも蘇ってくる。

…諦めちゃダメだ。千尋ちゃん、何より外澤さんに見せる顔が無い。彼女にだけは、弱気になってる私を見せまいと奮い立たせ、カメラを取る。

私はその日の仕事はいつも通りこなし、咲子と過ごしたマンションに帰宅する。何となく、"きっかけ"が欲しかったのかもしれない。ただいま。と言ってみる、そんなこと咲子が出て行ってから何年も言ってないのに、声が漏れてしまった。部屋はまっくらなのに、何で。返事なんて帰ってこないよ。ぐっ――と胸が締め付けられ、呼吸が止まる。後ろでバタンとドアの閉まる低い音がして、私の緊張の糸が切れた。

その夜、メイクを落とすのも忘れ、目いっぱい泣いた。

「さよなら、ちひろちゃん―――――」

「吉田さん、お疲れ。いつも台本、完璧だね。流石」

「い、いえ…。こっちが拙い分、台詞だけでもと思って…。子役からの人も多くて全然追いつけてないです。」

「みんな小さい頃からやってて生き残ってきた人たちだからね。でも吉田さんならすぐに追いつけるさ、気負い過ぎないで」

「ありがとうございます…。でも、たまに思うんです。私は元々そっちの人間で。今ここに居るのはわがままなんじゃないかって。この役を演じたかった人はたくさん居て…"引退"することもできたのに」

「吉田さんは認められてここに立ってる。吉田さんを抜擢した人たちの期待を裏切らないことが大事なんじゃないかな。完成品はその人たちも見る。演技は伝えるもの。"同じこと"だよね。演者やスタッフの皆さん。見てる人達の期待に応えたいって気持ち、吉田さんならよく分かってるでしょ」

共演の俳優さん、いつも気にかけてくれる。同い年なのに、私より業界慣れしてて大人で…あれ、こんな気持ち。おかしいな…。

「どうしたの?」 「えっ、あ…ごめんなさい」

「しっかり。次、始まるみたいだよ」 「…はいっ!」

咲ちゃん、まーやちゃん…。見てて。私、頑張るね。

気付いたら気絶していて、起きて窓を見ると日が昇っていた。そういえば、私鍵かけたっけと思い玄関まで行くと、姿見に映った自分の化粧が涙でぐちゃぐちゃになり酷い有様だった。今日は休日で、昨日、電話で咲子が会おうと約束をしてきたが、仕事が入ってるからと嘘をついて別の日にした。なんとなく、昨日の夜は荒れるだろうって分かってたから。*1

広い部屋で大の字に横になり小さく息を吐く。あ、タンスの角にホコリ溜まってる。机の下をゆらゆら揺れているものも見えた、黄色くて、へんな顔のやつ。スマホに付けたあのキーホルダーが、私に見つけて欲しそうにこっちを見ている。

そのままの姿勢でだらしなく机に置いたそれを手に取り電源を入れると、着信が入っていた。知らない番号だけど、私用のスマホは身内以外に教えてないはず。ああ、昔の仕事のお客様とそういう関係になって食事したこともあったな。彼かもしれない、何度か会ったけど私が追っかけやってるの知ってドン引きされて、嫌な別れ方しちゃった。まあ、この歳だしね。って、私なに考えてんだろ。でも…まあ、"終わった"し。一応出てみるか。

「はい、外澤です」

「田中と申します。こちらは…と、外澤磨彩さんの番号でよろしいでしょうか」

「そうですけど…え。その声、田中って…」

「久しぶり。高校卒業以来だけど、覚えてますか」

「私あんたに携帯教えた覚えないんだけど…」

「ごめん。でも、外澤のことだから、死んでるんじゃないかって。心配で」

「…はぁぁ!? 自意識過剰じゃないの? あんた」

「ごめん、マジでごめん。でも心配だったのは本当。元気そうで良かったよ」

「ごあいにくさま、昨日は大荒れでしたよ、今起きたとこ。で、何の用?」

「まあ、そうだろうな…。あの…さ。」

――――――――――――。

「田中くん、これ、まーやちゃんの携帯なんだけど、持っててくれない? ついでに私と咲ちゃんのも、田中くんのも教えてね」

「え、なんで。俺、外澤に嫌われてるからバレたらやばいし、別にそんな気もないけど」

「そんな気って?」 「いや…別に。ごめん、自意識過剰だったな」

「とりあえず、春シャン関係で私から連絡するかもしれないから、持っといて。女の子から卒業式に携帯番号渡されて断るつもり?」

「わ、分かったよ。外澤には言うなよ、本当…。ん、これ俺の。」

千尋ちゃん、外澤さん来たよ」 「じゃあね、まーやちゃんをよろしくね」

 

一瞬目が合ったけど、あの時みたいに睨まれて、それっきり。

―――続いてのニュースです。

『女優の吉田千尋さんが結婚を発表、お相手は…』

――――――――――――。

――――――。

――。

 

"小さなつぼみ 花を咲かせて 風にのって 君に届け"

 

「いいわよ。私、今めっちゃ八つ当たりしたい気分だったし。いいところだったわ」

「じゃ、待ってるからな。絶対来いよ。」

「りょーかい。待ってなさい!」

 

"ちひろちゃんが終わったから、私との可能性に期待した?"と意地張ったところで何も始まらない、もしそうだったとしても彼は"そういう"タイプじゃない、ふふ。敷いてやるわよ。

 

キラキラ咲く 願いこめて

等身大ハーモニー 満開のトンネルを

"私らしく駆け抜けよう"

 

磨彩は涙で乾いた化粧を洗い流し、慣れた手付きでメイクを整えた。

「(うそ。なんか、今日は今までで一番うまくいったかも)」

 

『まーやちゃん、綺麗だよ』

『いってらっしゃい!』

とんっ――。

誰かが、2人。私の背中を押したような気がした。

 

ときめき膨らんでいく 春色のストーム――――――

 

推しが隣で授業に集中できない! -END-

 

 

 

 

(c) 講談社 / 原作 筒井テツ 著 菅原こゆび

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冗長のためカットした部分です↓

*1:[独白]

「あってもちひろちゃんと咲子の2回だろうし、だとしたらもっと先だろうし。油断してた…」

ふと、本山の結婚式でした咲子との会話が鮮明になった私の頭を過った。咲子は仕事で出会って意気投合した2歳年上の男性とゴールイン、私やちひろちゃんの前では見せない顔してたな。誠実で、すごく良い人そうだった。現に"ここ"に帰ってこないってことは上手く行ってるんだろう、同棲も長かったし。私はお父さん居ないし、母親が連れてくる男はろくでもないのばっかりで、男性に憧れた事なんて一度も無い。たぶん、これからも…。

「(楽しかったなぁ、ここで、3人で。お酒飲んで…いっぱい話したよね)」

「でも私が一番望む関係は無理だってことも、本当の気持ち伝えてもちひろちゃんは困るってことも、一緒にいるうちに分かっちゃった」

「だから今まで築いた関係が私の一番の大切なもので――――」

気持ち、伝えても良かったかな。なんて色んな可能性を何度も考えてる内に、ちひろちゃんと離れた時間が多くなってそれも叶わなくなった。もう今の私は彼女をこっち側から応援することだけに縋って逃げてたのかもしれない。

「学費は出せないから、自分でやりくりしなさい。先生から聞いたわ、とにかく稼ぎたいんですってね。現実的でいいじゃない」

「早く男連れてきなさい。その方が早いわよ」

言い返せなくて悔しかった。だから早く自立したい一心でバイトも勉強も頑張った。何度も修羅場があったけど咲子に頼るのは違う気がして。色んな事、やった。現実的ってなんだろう。途中からの私は、ちひろちゃんから夢をもらっていたのかな。その気持ちを認めて諦めるのが怖くて。誤魔化してただけじゃないのかな。答えが出ない。でも、はっきりしてるのは…